#13 暴力・人権侵害の被害者支援拡充のためにできること

心理療法一般
<strong>Nico</strong>
Nico

皆さん、こんにちは。臨床心理士、公認心理師のNicoです。

Nicoの心理療法の庭へようこそ。

久しぶりの投稿で、これまでと随分毛色の違う内容ですが、最近のお仕事や世相を通して、心理職も人権問題や社会保障にもっと関わっていく必要があるのではないかと考えています。

今年度大きな話題としては、ジャニー喜多川(ジャニーズ事務所の創業者、2019年死去)による児童性虐待そのものと、事務所、エンタメ業界、マスコミ、ひいては日本文化全体が公然の秘密として、これを隠蔽、無視してきたことがあります。

この一件が明らかになったことは非常に重要ですし、これから何年もかけて、全容を明らかにしたうえでやることは山ほどあります――事務所の解体と救済基金の設立、被害者への補償、治療、法整備への接続等。

ただ、より大きな問題だと思うのは、日本においては、ジャニー喜多川の被害者以外の、同様の加害行為を受けた一般の人々への援助や保障(補償)があまりにも乏しいことです。

性加害や虐待、DV、パワハラ、これらの重大な人権侵害の組織的隠ぺい、被害者への非難や攻撃(二次加害)は、同じようにずっと昔から、もっと広い範囲で、膨大な数の被害者を生んできました。

これらの被害を受けた人は、長期にわたって極度の緊張状態におかれ、ただ普通に生きる能力までも奪われることが少なくありません。

被害者は、安全な生活環境を確保し、治療を受ける必要がありますが、その費用のほとんどが自己負担です。

医療に関しては公的支援がありますが、こうした被害に遭われた方の場合、服薬加療だけでは十分な回復が望めず、より集中的な治療が必要になることも多いのですが、そのための心理療法等の費用は、たいてい公的医療支援の対象外です。

また、被害を警察や司法に訴え、膨大な時間と労力、多額の費用を支払い、さらに「非常な幸運に恵まれて」ようやく慰謝料(損害賠償)を得られたとしても、多くても数百万円でしょう。

これでは、被害を受けずに働けていた場合に稼げたお金にすら全く届きません。

まして、身を守るための引っ越しや治療にかかる費用まで含めると、数十万から数百万の慰謝料など、ないに等しいです。

**********************************************少しわき道にそれますが、性被害者の弁護を引き受けてくれる弁護士を探すのも大変です。

たとえば、インターネットで「性被害 弁護士」「強制性交 弁護士」検索すると、加害者の弁護士の方が圧倒的に多く引っ掛かり、これを見るだけでも激しく落ち込むかもしれません。

加害者が「性犯罪を起こしてしまったとき」「訴えられてしまったとき」などの文面は、加害者が自分の意思で行ったことであるにもかかわらず、あたかも「不慮の事故に遭ってしまった」かのような認識を助長するでしょう。

弁護士もお金を稼ぐ必要があるとはいえ、このような宣伝の仕方自体、被害者をバカにしていますし、被害者を深く傷つけます。

「示談・不起訴に持ち込む方法や交渉」「刑罰を軽くする方法」といった記述も同様です。

警察庁HP性犯罪被害<経済的な支援>には、法律相談窓口へのリンクのほか、経済的支援の案内もありますので、こちらを参考になさるのが良いと思います。

**********************************************

話を戻すと、被害者が被害から回復し、普通に生きられるようになるまでには、非常に大きな費用(お金、心身のエネルギー、時間)がかかります。

手持ちの資金が底をついてもなお、十分な回復までいかず、生活保護を受けておられる方も少なくありません。

その生活保護も、福祉事務所や担当のケースワーカーによっては、さらなる人権侵害により、状況を悪化させられることがあります。

被害に遭い、困っている人を助ける主戦力であるはずの医療、司法(警察)、福祉がこのような状況です。

心理職はこのすべての領域で活動していますが、十分な人員や予算の対象になっていないことの方が多いのも問題です。

このあたりをどうしていくか。

SNSが発達した現在、有望と考えられるのは、この問題に関心をもつ人が集まり、研究や援助資源を立ち上げていくことかもしれません。

内閣府でも問題意識をもって、「女性に対する暴力の根絶」にむけた取組を行うようになっているので、この取組との接続を目指すのも有効な戦略でしょう。

冒頭に取り上げたジャニー喜多川による児童性虐待への注目と各方面への影響をきっかけとして、さまざまな暴力被害に遭われた方々への援助や保障(補償)を拡充していく必要があります。

<strong>Nico</strong>
Nico

微力ながら、私も研究や援助資源づくりをしていきたいと思います。

Nicoのアバター

Nico

30代の臨床心理士、公認心理師。教育機関や精神科クリニックで、心理療法(カウンセリング)や心理検査を行ってきました。利用者にとっても、提供者にとっても、より良い臨床心理援助の形を創っていくことに関心をもって活動しています。

コメント

タイトルとURLをコピーしました