
皆さん、こんにちは。臨床心理士、公認心理師のNicoです。
Nicoの心理療法の庭へようこそ。

今日も一緒に心理学や心理療法について勉強しよう!
今日のテーマは、【統計学的エビデンスあり】うつ病・不安障害の簡単なチェックリストK6/K10の紹介です。
皆さんは、こんなことで困っていませんか?
- ひどくゆううつな気分や、不安感が続いている。
- でも、自分の症状が病院に行くほど重たいのかわからず、受診をためらってしまう。
- ネットでセルフチェックをしようと思ったけれど、ちゃんとした検査かわからない。

そういう方には、今回紹介するK6(Klesser6)、K10(Klesser10)を使って、ご自身の状態をチェックしてみることをおすすめします。
読み方は「ケーシックス(クレッサー・シックス)」「ケーテン(クレッサー・テン)」で、アメリカのクレッサーら(2002)が開発した、統計学的な根拠(エビデンス)もある簡便なスクリーニング検査です。
6個もしくは10個の質問に答えて、足し算をするだけで、うつ病性障害・不安障害などの可能性が検出できます。
ただし、実際の診断は、専門の医師による診察が必要です。基準点を下回ったからといって、ご自身の状態を軽く考えないようにしましょう。
ご自身の状態を数値化・客体化することで、受診や相談の「足がかり」になれば幸いです。
K6/K10の内容・評価方法・結果の理解
まずは実際にチェックしてみましょう。紙と鉛筆があれば計算がしやすいと思います。
過去30日の間にどれくらいの頻度で次のことがありましたか。
- 全くない・・・1点
- 少しだけ・・・2点
- ときどき・・・3点
- たいてい・・・4点
- いつも・・・・5点
K6の項目
- 神経過敏に感じましたか。
- 絶望的だと感じましたか。
- そわそわ、落ち着かなく感じましたか。
- 気分が沈み込んで、何が起こっても気が晴れないように感じましたか。
- 何をするのも骨折りだと感じましたか。
- 自分は価値のない人間だと感じましたか。
ここまでの合計得点= /30点
合計得点が15点以上であれば、うつ病性障害や不安障害の可能性が高いと考えられます。
まだ余裕があって、より精度の高い結果が欲しい方は、以下の項目を追加してください。
K10で追加される項目
- どうしても落ち着けないくらいに、神経過敏に感じましたか。
- 理由もなく疲れ切ったように感じましたか。
- じっと座っていられないほど、落ち着かなく感じましたか。
- ゆううつに感じましたか。
10項目の合計得点= /50点
10項目の合計得点が25点以上であれば、うつ病性障害や不安障害の可能性が高いと考えられます。
ただし、実際の診断には専門の医師(精神科や心療内科)の診察が必要です。
また、基準点を下回った場合でも、ご自身がしんどい、つらいと感じるならば、それはあなたにとっての事実です。ためらわず受診、相談に行くことをおすすめします。

K6・K10の妥当性、エビデンス
開発過程
K10と、その短縮版であるK6の開発は、Klesserら(2002)によって行われました。
元々は、612あった質問項目の候補から、5段階の大規模な疫学研究を経て、項目反応理論(後述)によって、検出力の高い項目に絞り込まれました。
スクリーニングの対象
K6/K10がスクリーニングできる対象疾患の基準は、
DSM-ⅣとICD-10における
- 抑うつ性障害(大うつ病、気分変調症)
- 不安障害(パニック障害、広場恐怖、社会恐怖、全般性不安障害、PTSD)
です(古川ら,2003)
ちなみに、DSM-ⅣとICD-10は、ともに精神疾患の診断や統計に用いられる基準です(最新版はDSM-5とICD-11)。
検出力と妥当性
Furukawaら(2003)によると、WHO‐統合国際診断面接Composite International Diagnostic Interview(CIDI)と、DSM-Ⅳを基準とした気分障害と不安障害の検出力は、K10の方がK6よりも高いです。
そのため、より重度の障害のスクリーニングでは、K10の方が優れています。
しかし、K6の方が、より簡潔であり、身体症状の有無で区別したサブサンプルでの結果の一貫性もあります。
そのため、K6の方が、DSM-Ⅳ基準の気分障害や不安障害のスクリーニングでは好まれるとされます。

また、K6/K10 は、従来用いられることが多かった、精神健康調査票GHQ12よりも高い検出力が確認されています(Furukawa et al.,2003)。
さらに、K6/K10は原著者により、著作権フリーとなっていることも特徴で、類似の質問紙と比べて研究目的での利用もしやすいです。私も博士論文関係の研究で利用しました。
日本語版は、古川ら(2003)が作成し、WHO‐統合国際診断面接(CIDI)による聞き取りと、DSM-ⅣおよびICD-10診断基準に従った判定を外部基準とした妥当性が確認されています(川上,2003;古川ら,2003)。
古川ら(2003)によれば、
有病率10%程度の集団において、精神疾患である確率が50%以上の検査後確率の集団を得たいならば、K6ならば15/30点以上、K10ならば25/50点以上をカットオフとして用いるのが適切だろう
古川ら(2003)
ということです。
つまり、検査前の段階では10人に1人の確率で、気分障害や不安障害の人がいる集団に対して検査をしたとします。
その結果、15点(K6)もしくは25点(K10)以上の人は、50%以上の確率で気分障害、不安障害であると考えられるということです。
項目反応理論について
私は、統計学の専門家ではないので、文献(教養試験事後評価解析委員会,2016;宇佐美ら,2019)を参考にした簡単な説明でご容赦ください。

項目反応理論(Item Response Theory; IRT)は、TOEFLや「ITパスポート」といった大規模試験の項目作成・実施・評価・運用のための優れた実践モデルとして、世界的に定着しているテスト理論です。
従来のテスト理論では、検査項目の合計得点や、それにもとづく偏差値(順位)を基準に測定が行われていました。
しかし、それでは検査項目の答えやすさ(難易度や識別力)や、サンプルの取り方の影響を受けてしまうという問題がありました。
その問題はたとえば、次のような場合に生じます。
同じ学力テストで簡単な問題ばかり正解したAさん(70点)と、難しい問題に正解したBさん(60点)を比べたいとします。
たしかに、合計得点としては、Aさんの方がBさんより高いです。
しかし、この結果は、Aさんの方がBさんより「学力が高い」ということを意味しません。
なぜなら、二人の得点の差が意味するのは、「テストの制限時間内に多くの問題を解く要領の良さ」かもしれないからです。
二人が回答したテスト項目の難しさが異なるため、「純粋な学力」を単純比較できないのです(学力の定義にもよりますが)。

もうひとつの例を挙げます。
進学に力を入れている学校で成績が10位の生徒Cさんと、あまり進学を重視していない学校で成績が1位の生徒Dさんを比較するとします。
直感的にわかるかもしれませんが、CさんとDさんの成績を比較することは難しいです。
なぜならば、学校という集団(サンプルを取る場所)が変われば、順位や偏差値の意味も変わるからです(校内偏差値60と全国偏差値60は意味が違う)。
こうしたテスト項目の組み合わせによる差や、集団の特性の違いに影響されない成績評価の方法として考案されたのが、項目反応理論です。
項目反応理論では、項目ごとの識別力と、その項目に対する反応(回答パターン)を数値化し、そこから測定したい変数(成績や重症度)を推定するモデルを用います。
推定のモデルは、宇佐美ら(2019)を参照していただければと思います。
ネット上で項目反応理論をわかりやすく(難しい数理モデルを用いずに)説明してくれて、かつ信頼性のある文献としては、以下のものがあります。
共用試験事後評価解析委員会(2016)項目反応理論についての説明書(学生版)Ver.1.1
この「共用試験」は、臨床実習前の医学生・歯学生が、必要な基本的知識などを身に着けているかを評価する試験CBT(Computer Based Testing)のことです。
その試験を評価する委員会が公表していることから、この資料の信頼性は十分にあると判断しました。
K6とK10は、このような理論にもとづいて、識別力の高い項目を精選して開発されたスクリーニング検査です。

まとめ
今回は、うつ病・不安障害の簡単なチェックリストK6/K10の紹介として、以下の内容をお伝えしました。
- Klesserらが大規模な疫学研究と項目反応理論にもとづいて開発したK6、K10は、簡単ながら高い検出力をもった妥当性の高い精神疾患のスクリーニング検査である。
- K6で15/30点以上、K10で25/50点以上の人は、50%以上の確率で気分障害、不安障害であると考えられる。
- ただし、実際の診断は、専門の医師(精神科や心療内科)による診察が必要です。基準点を下回ったからといって、ご自身の状態を軽く考えないようにしましょう。
うつ病や不安障害などの精神疾患は、早期に発見し、しっかりと治療を受けることが重要です。
基準点を超えている場合には特に、早めに医師に相談しましょう。

基準点を下回った場合でも、ご自身がつらい、しんどいと感じるならば、それは重要なサインです。ぜひ専門家に相談することをおすすめします。

それでは、今日もありがとうございました!
- Furukawa, T.A., Klesser, R.C., Slade, T., & Andrews, G.(2003).The performance of the K6 and K10 screening scales for psychological distress in Australian National Survey of Mental Health and Well-Being. Psychological Medicine, 33, 357-362.
- 古川壽亮・大野 裕・宇田英典・中根允文(2003).一般人口中の精神疾患の簡便なスクリーニングに関する研究.平成14年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)心の健康問題と対策基盤の実態に関する研究 研究協力報告書,127-130.
- 川上憲人(2003)こころの健康問題と対策基盤の実態に関する研究.平成14年度厚生労働科学研究費補助金(厚生労働科学特別研究事業)心の健康問題と対策基盤の実態に関する研究 研究協力報告書,1‐9.
- Klesser, R.C., Andrews, G., Colpe, L.J., Hiripi, E., Mroczek, D.K., Normand, S.L.T., Walter, E.E., & Zaslavsky, A.M.(2002).Short screening scales to monitor population prevalences and trends in non-specific psychological distress. Psychological Medicine, 32, 959-976.
- 共用試験事後評価解析委員会 試験信頼性向上専門部会(2016)項目反応理論についての説明書(学生版)Ver1.1. Microsoft Word – 7.項目反応理論についての説明書_学生版Ver1.1).doc (oita-u.ac.jp) 2022年10月8日最終閲覧.
- 宇佐美 慧・荘島宏二朗・光永悠彦・登藤直弥(2019)研究委員会企画チュートリアルセミナー 項目反応理論(IRT)の考え方と実践ー測定の質の高いテストや尺度を作成するための技術.教育心理学年報,58,321‐329.

Nico
コメント