
皆さん、こんにちは。臨床心理士、公認心理師のNicoです。
Nicoの心理療法の庭へようこそ。

今日も一緒に心の健康について勉強しよう!
今日のテーマは、【精神科勤務の心理士/師が解説】自立支援医療制度を利用して治療中のお金の不安を軽減しようです。通院・治療にかかるお金の不安を軽減する制度シリーズ1回目です。
精神科で心理士/師として勤務していると、こういう困りごとを聞くことがあります。
- うつや適応障害と診断されて休職することになったけれど、先々の経済的不安が大きい。
- カウンセリングの併用もしたいけれど、診察とお薬と合わせると負担が大きい。
そういう方には、公的な支援制度の利用を検討してみることをおすすめします。
公的な支援制度は、以下のようなものがあります。
- 自立支援医療制度(精神通院医療)
- 傷病手当金
- 国民健康保険料の減免申請
- 国民年金保険料の減免申請
- 精神障害者保健福祉手帳
- 障害年金

いくつかの手続きに加えて、初期費用(診断書の代金)がかかるものもありますが、トータルで経済的負担が小さくなることは、安心して休養するために非常に重要です。
また、今すぐに必要ではないけれども、万が一ご自身や知人が精神疾患にかかったときのセーフティーネットがあるということを知っているだけでも、安心材料になると思います。
不必要な民間保険に入らずに済む分、むしろ将来に備えた貯蓄もしやすくなるでしょう。
今回は、通院初期から利用できる自立支援医療制度(精神通院医療)について解説します。
他の制度については、順次記事を更新していきたいと思いますので、お待ちください。
治療における休養の必要性と経済的不安
適応障害やうつ病をはじめ、多くの精神疾患の治療においては、休養が重要と言われます。
特に、症状が出始めてからも、頑張って仕事や学校に行き続け、心身の限界を超えてはじめて受診に至った人の場合、その分、治療・回復には時間がかかることが多いです。
そのあいだは、収入の減少や治療費の負担も生じます。
そのため、
- 「休養することの重要性は理解しているけれども、実際の生活のことを考えると休めない」
- 「仕事は休んでいるけれど、お金の心配をずっとしていて、気持ちが休まらない」
と感じる方も多いと思います。
なかには、焦って復職、転職をして、症状が悪化するという方もいます。

こうした経済的不安からくる焦りの気持ちは、自然なものですが、必要な休養を取りづらくし、回復を遅らせる大きな要因でもあります。
これに対する最も有効な手立てのひとつは、公的な支援制度を知り、利用することです。
健康なときには、その存在や有益性を意識することは少ないですが、実は公的支援を利用することによって、経済的負担をかなり減らすことができます。
昨今、社会保険料の負担が重いとも言われていますが、裏を返せば、私たちにはその制度を利用する権利があるということです。
今回は、そのなかでも通院初期から利用できる「自立支援医療(精神通院医療)」について解説します。
安心して制度を利用し、必要な休養、治療に専念しましょう。
医療費がそれなりにかかる理由
精神疾患の治療は、継続的な服薬が必要な場合が多く、薬代もそれなりにかかります。
薬の種類によっては、
- なるべく副作用を少なくし、患者の体質と合っているかを確認するために、最少容量から始め、徐々に必要な量まで薬の量を増やす
- また、再燃防止のため、自覚症状が消えたあとも一定期間は同じ量を飲み続け、その後、主治医と相談しながら少しずつ減らしていく
という手法が取られます。
そのため、ある程度まで診察代、薬代が増えていきますし、それが一定期間続くので、年間の医療費はそれなりの額になってしまいます。
また、比較的新しい薬は、効き目が高く、副作用も少ない一方で、まだ後発医薬品(ジェネリック)が出ておらず、薬代も高くなりやすいです。

少し脱線しますが、上記の事柄について医師とのコミュニケーションがうまくいっていない場合、
- 「薬がどんどん増えていくのが嫌だ」
- 「いつまでも薬を辞められないのが嫌だ」
と感じられる方もいます。
ただ、自己判断による急な減薬、断薬は、症状を悪化させる恐れがあります。
お薬が合わない場合や減らしたい場合は、主治医と相談しましょう。
その相談自体も、自分の状態を掴み、伝え、より良い選択肢を一緒に考える大切な治療プロセスです。一人では難しい場合は、第三者に少し手伝ってもらうのも一手です。
医療費の自己負担が減る自立支援医療制度(精神通院医療)
こうした継続的にかかる医療費を抑える制度が、自立支援医療(精神通院医療)です。
この制度のメリットは、医療費が軽減されることです。
デメリットを挙げるとすれば、指定の医療機関1か所ずつしか利用できないことと、毎年更新手続きが必要であることでしょう。
以下、もう少し詳しく解説します。
制度概要
厚生労働省HPによれば、
①患者の負担が過大なものとならないよう、所得に応じて1月当たりの負担上限額を設定。(月額総医療費の1割がこれに満たない場合は1割)
②費用が高額な治療を長期にわたり継続しなければならない(重度かつ継続)者(中略)は、更に軽減措置を実施。
(厚生労働省HP 自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み より)(中略はNico)
となっています。
簡単に言えば、
- 所得が一定未満の場合、ひと月当たりの自己負担額の上限が決められ、それ以上は支払わなくて済むようになる。
- その上限に達しない場合は、総医療費の1割を自己負担するだけで済む(一般には3割)。
- お住まいの自治体によっては、さらに軽減されることもある。
ということです。

なお、残念ながら、市町村民税 235,000円以上(年収約833万円以上) の場合は、対象外となってしまいます。
ただ、その場合でも、「重度かつ継続」の要件に該当する場合は、支援を受けられます(2022年10月時点)。
- 統合失調症、躁うつ病、うつ病、てんかん、認知症等の機能障害、薬物関連障害(依存症等)の者
- 精神医療に一定以上の経験を有する医師が判断したもの
より詳しくは、厚生労働省のHPを参照のうえ、主治医にご相談ください。
「指定自立支援医療機関」でのみ利用可能
この自立支援医療(通院精神)が利用できる医療機関は、以下のように決められています。
- 各都道府県又は指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」(病院・診療所、薬局、訪問看護ステーション)
- そのなかで受給者証に記載されたもの(申請者が指定する)
そして、受給者証に記載できるのは、病院、薬局ともに1か所ずつで、制度の利用申請時に指定します。
受給者証に記載されていない医療機関では、医療費軽減は受けられません。
そのため、転院の際には、再度手続きが必要になります(後々役立ちますので、転院時には、紹介状を書いてもらうことをおすすめします)。
制度を利用したい場合には、受診の予約時などに、その病院が自立支援医療を利用できるかどうか問い合わせると良いでしょう。
すでに精神科にかかっていて、その病院が指定自立支援医療機関なのに、医師から自立支援医療の話をされなかったという方もおられるかもしれません。それは、
- 診療があまりに忙しく、医師が切り出すのを忘れたままになっている場合のほか、
- 医師としては元々、全員に勧めたかったが、一定数の患者から、「そんなに長く通うつもりはない」と強く拒まれることが続いたため、経済的に困っていることが話題になった患者にだけ提示するようになった
ということがあるそうです(後者は、ある開業医から聞いたお話です)。
「使える支援制度を教えないのは、専門家の怠慢だ」という批判もあるかもしれませんが、医師としても一律に勧めるのは難しいところがあるようです。
そのため、より良い治療関係を作るためには、利用者の側も、積極的に制度を知り、利用しようという姿勢をもつことが大切かもしれません。
当ブログの情報が、そのためのお役に立てば幸いです。
申請手続き
申請には、医師による診断書(様式あり)が必要です。
診断書の様式は各自治体のHPからダウンロードすることも可能ですし、医療機関によっては、様式を準備している所もありますので、主治医とご相談下さい。
書いてもらった診断書は、コピーを取っておきましょう。ほかの手続きの際に役立つことが多いです。

申請は、各市町村の担当窓口で行います。窓口の名前は自治体によって異なることがありますが、障害福祉課、保健 福祉課が担当する場合が多いようです。
また、申請時に必要な書類も自治体によって異なる場合があるようです。
(参照)厚生労働省HP 自立支援医療(精神通院医療)について
自治体にもよりますが、申請から承認まで1~3か月程度かかります。
承認されると、
- 「自立支援医療受給者証(精神通院)」
- 「自立支援医療(精神通院)自己負担上限額管理票」
の2つが医療機関に届きますので、受診時に受け取れます。
それ以降は、この2つを持って指定の医療機関を受診すれば、医療費が軽減されます。
なお、承認されるまでのあいだは、一旦、元々の負担額(一般に3割)を支払います。
しかし、「自立支援医療受給者証(精神通院)」が発行されたあと、払い戻しが行われますので、ご安心ください。
払い戻し時には、申請時から承認時までの診察とお薬の領収証の返還が求められますので、領収証は捨てないようにしましょう(その他の公的支援利用の際にも役立ちます)。
有効期限と更新手続き
自立支援医療(精神通院医療)は1年間有効で、毎年更新が必要です。
ただ、治療方針に変更がなく、有効期限内に更新すれば、2回に1回は医師の診断書の省略ができるようです。
期限が切れて、新たに申請し直すと、診断書の料金がかかるので、早めに動きたいですね。
更新手続きは、おおむね有効期限が切れる3か月前から受付可能ですので、詳しくは主治医や申請した市町村にお問い合わせください。

早めに動き出すと、気持ちにも余裕ができて後が楽だよ。

書類の準備など、一人で動くのが難しければ、誰かに助けを求めましょう。
まとめ 自立支援医療を利用して安心して治療に専念しよう
今回は、医療費を軽減する自立支援医療(精神通院医療)の紹介として、以下の内容をお伝えしました。
- 公的な制度を利用して経済的負担を減らし、必要な休養、治療に専念しましょう。
- 自立支援医療(精神通院医療)は、所得に応じて、医療費の自己負担上限が決まる。
- 上限未満の医療費は、1割負担になる。
- 所得が一定以上の場合は対象外だが、「重度かつ継続」に該当すれば、利用できる。
- 制度が利用できるのは、「指定自立支援医療機関」のうち、病院、薬局など1か所ずつで、自分が受診する機関を受給者証に記載して利用する。
- 医師による診断書と必要書類をもって、各市町村の担当窓口で申請する。
- 申請から承認までの期間は、一旦元々の負担額を支払うが、承認されれば、払い戻しされる。
- 1年ごとに更新が必要で、更新手続きは、有効期限のおおよそ3か月前から受付開始。
- 後々役に立つことが多いので、診断書はコピーを取り、領収証は捨てずに取っておく。
各制度のより詳しい内容や手続きは、文献に示したHPや各地自体の相談窓口、もしくは主治医とのあいだでご確認下さい。

うつ病や不安障害などの精神疾患は、しっかりと治療を受け、休養を取ることが重要です。
安心して治療、休養に専念するため、利用できる制度は利用しましょう。
- 厚生労働省HP 自立支援医療(精神通院医療)の概要 自立支援医療制度の概要 |厚生労働省 (mhlw.go.jp) 2022年10月11日閲覧
- 厚生労働省HP 自立支援医療の患者負担の基本的な枠組み 緊急に措置すべき事項 (mhlw.go.jp) 2022年10月11日閲覧
- 厚生労働省HP 自立支援医療(精神通院医療)について 0000146932.pdf (mhlw.go.jp) 2022年10月11日閲覧

Nico
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